日本の海洋海底資源開発で資源大国戦略

未分類

資源小国から資源大国へ、深海に眠る国家戦略

日本は、約447万平方キロメートルという世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を持ち、海洋国家としての潜在力を秘めています。

エネルギー安全保障、産業競争力、そして地政学的優位性の確保という観点から、海洋海底資源の開発は、今や国家戦略の核心と位置づけられつつあります。

本記事では、海底に広がる膨大な資源とその開発動向、技術革新、政策支援、そして直面する課題と将来展望を体系的に解説します。

海底に眠る5大戦略資源

◆ メタンハイドレート(燃える氷)

天然ガスの代替として注目されるメタンハイドレートは、南海トラフ(砂層型)と日本海側(表層型)に分布。JOGMECは2013年以降、試験生産を通じてガス抽出に成功。2027年の商業化を目指し、出砂防止技術の開発が進行中です。

◆ 海底熱水鉱床(銅・金・銀の宝庫)

火山活動に伴って形成される熱水鉱床は、沖縄トラフや伊豆・小笠原海域に点在。2017年には世界初の海底採鉱試験を成功させ、技術的な可能性が実証されました。経済性と環境保全の両立が鍵です。

◆ コバルトリッチクラスト(EV時代の戦略鉱物)

コバルトやニッケル、白金を含むこのクラストは、南鳥島周辺の海山に広く分布。EVや再生可能エネルギー機器の製造に不可欠で、2028年の商業化に向けて、クローラー型の専用採掘機が開発中です。

◆ マンガン団塊(海底に眠る鉱物倉庫)

水深4,000~6,000mの深海底に散らばる団塊は、マンガン、銅、コバルト、ニッケルを含有。南鳥島EEZでは2.3億トン超の埋蔵量が確認され、2026年から大規模試験が予定されています。

◆ レアアース泥(ハイテク産業の生命線)

スマートフォン、風力発電、EVに不可欠なレアアースが高濃度で含まれる泥状資源。2018年に東京大学が南鳥島沖で高濃度泥を発見し、ポンプ吸引による採取試験に成功。2030年を視野に商業化が進行中です。

開発を支える政策と制度の進化

■ 海洋基本法と国家戦略の融合

2007年に制定された「海洋基本法」は、日本のEEZを活用した資源戦略の基盤となり、2008年以降は5年ごとの「海洋基本計画」により、海洋資源の探査・開発が国家主導で推進されています。

■ 資源安全保障の重要性

中国によるレアアース輸出規制(2010年)や国際サプライチェーンの不安定化により、日本の自給体制の脆弱性が浮き彫りに。海洋資源の国産化は経済安保の核心です。

技術革新と産官学の総力戦

◆ 探査の最前線

JOGMECの探査船「資源」やJAMSTECのAUV「うらしま」などが高精度の物理探査を実施。AI解析や衛星データの活用で、効率的かつ的確な資源探査が可能になっています。

◆ 採掘・揚鉱のブレイクスルー

  • メタンハイドレート:減圧法とガス回収システム

  • 熱水鉱床:小型採掘機と海底選別技術

  • クラスト・団塊:クローラー型採掘機とエアリフト方式

  • レアアース泥:ポンプ吸引と連続揚泥システム

◆ 産官学連携の力

JOGMEC、JAMSTEC、東京大学、三菱造船、住友金属鉱山などが連携。レアアース泥開発推進コンソーシアムなど、複数のプロジェクトが同時進行しています。

環境保全と国際対応

深海採掘による生態系影響やメタン漏洩への懸念に対応するため、環境影響評価(EIA)や低影響採掘機、国際海底機構(ISA)の規定準拠が進められています。

日本は国際的ルール形成においてもリーダーシップを発揮しています。

未来への展望 ― 戦略とロードマップ

主な目標
2025年 日本海側でメタンハイドレート試験採掘
2026年 マンガン団塊の大規模揚鉱試験
2027年 メタンハイドレート商業生産開始
2028年 レアアース泥・コバルトリッチクラストの商業化
2030年~ マンガン団塊の商業採掘本格化

これらの目標が達成されれば、日本は資源小国から資源大国へと飛躍し、エネルギー・素材の内製化による産業競争力の強化、さらには地政学的優位性の確立も現実のものとなります。

結びに

日本の海洋海底資源開発は、単なる資源の獲得にとどまりません。

それは、「経済安全保障」「技術革新」「国際競争力」「環境との共生」を同時に達成する、

未来志向の総合戦略です。深海に広がる資源フロンティアは、今後の日本経済の命運を左右する重要なステージとなるでしょう。

\ 最新情報をチェック /

Top PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました