査定制度が日本経済の未来を決める

戦後日本の財政運営の中心にある財務省は、長らく「財政規律」を組織の根幹に据え、国の歳出を厳格に管理してきました。

職員評価制度もこの方針と強く結びついており、”いかに支出を抑えるか”が出世や報酬に直結してきたのが現実です。

しかし2025年現在、日本が直面する社会課題──経済停滞、少子高齢化、地域衰退、経済安全保障の強化──は、従来の緊縮型財政運営では到底解決できない段階に入っています。

今、必要とされているのは、「経済成長」と「国民福祉」の両立を可能にする積極財政の再構築です。

その鍵を握るのが、財務省の査定基準の抜本的な改革にほかなりません。

本稿では、財務省の現行評価制度の問題点を指摘した上で、積極財政へとシフトするための評価制度設計、実行ステップ、国民との対話、そして文化的転換の必要性を包括的に解説します。

財務省評価制度の現状と限界

財務省職員の評価は、内閣人事局の「国家公務員人事評価ガイドライン」に準拠して実施されており、主に能力評価と業績評価で構成されています。

現場での主な評価ポイントは以下の通りです：

評価は絶対評価方式で、令和4年以降はS〜Dの7段階に細分化されています。

直属の上司と局長級による評価が行われ、一部では360度評価も試行されています。

しかしこの制度は、いかに「支出を抑制し、債務を拡大させないか」を最重視する設計となっており、経済成長や国民生活の改善といった広い視点でのアウトカムはほとんど評価に反映されません。

これにより、若手職員の間でも保守的な姿勢が染みつき、「挑戦すること」がリスクとされる傾向が強まっています。

新しい評価制度では、GDP押上効果、雇用創出数、民間投資誘発額といった経済的成果を測るKPIを導入します。

たとえば、2025年度の半導体支援（TSMC熊本工場誘致）では、約2兆円の予算によって推定1.8兆円のGDP押上効果と10万人の雇用創出が見込まれており、こうした成果を職員評価に結びつけます。

現行の「国の信用維持」というミッションに加え、「国民福祉を最大化する成長戦略の立案と実行」を明記。

部署を横断した連携（主計局×主税局×理財局×国際局）での成果を評価するチーム型評価も導入します。

従来の「ミスは減点」方式から、挑戦を評価し、長期的成果を重視する方向へ転換します。

たとえば、GX投資による雇用創出を成功させた職員はS評価に、またバイオテクノロジー支援のような中長期プロジェクトも予測評価で加点します。

政策のマクロ効果（GDP、雇用、物価）をAIや経済モデル（DSGE、CGE）でリアルタイム分析。

財務省の評価システムをクラウド化し、施策効果を即座にフィードバックする仕組みを構築。ブロックチェーンで記録を残し透明性も確保します。

SNS（X等）での反応、世論調査結果、経団連や学者からのフィードバックをKPIに組み込みます。

例：子育て支援政策がXで10万「いいね」を獲得した場合、国民満足度の指標として加点。

成長投資による国債増加を単なるリスクとせず、税収増加や経済波及効果とセットで分析。

予算執行の正確性や説明責任も評価に加え、「責任ある積極財政」を推進します。