自己資本比率とは、企業の財務状況を評価する指標の一つです。
自己資本比率が高いほど、企業の安定性や成長性が高いといわれますが、その理由や計算方法、産業別の目安などをわかりやすく解説します。
自己資本比率とは
自己資本比率とは、企業の総資本に占める自己資本の割合を示した財務指標です。
自己資本とは、主に株主からの出資であり、返済する必要のない資金です。
総資本とは、自己資本と銀行などからの借入金である他人資本(負債)の合計です。
自己資本比率の計算式は以下のようになります。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本(他人資本+自己資本)×100(%)
例えば、自己資本が500万円、他人資本が700万円の企業の自己資本比率は、以下のように求められます。
500万円 ÷ (700万円+500万円)= 41.7% となります。
自己資本比率は、企業の財務状況を客観的に評価するための指標としてよく用いられます。
自己資本比率が高いということは、借りているお金が少なく、自分たちの資金で経営しているということです。
そのため、自己資本比率が高いほど、企業の安定性や成長性が高いといわれます。
自己資本比率の目安と産業別の平均
自己資本比率の目安としては、30~40%以上であれば、倒産しにくい安定した企業と考えられています。
中小企業庁によると、2020年度の中小企業全体の自己資本比率は、40.92%でした。
産業によって状況は異なりますが、自己資本比率がこの数値を上回っていれば、平均以上の安定性は期待できるといえるでしょう。
一方、自己資本比率が10%以下の場合は、経営が危ない可能性があります。
自己資本比率が低いということは、負債が多く、返済の負担が大きいということです。
赤字や借金が膨らんでいることを示しています。
特に自己資本比率がマイナスの場合は、債務超過の状態であり、倒産のリスクが高いといえます。
ただし、自己資本比率は、産業によって平均が異なります。
少ない資本でもある程度経営が成り立つ産業では、自己資本比率が低くなる傾向にあるのです。
以下に、産業別の自己資本比率の平均を示します。
産業 |
自己資本比率 |
鉱業、採石業、砂利採取業 |
64.2% |
情報通信業 |
49% |
製造業 |
48.7% |
学術研究、専門・技術サービス業 |
47% |
サービス業 |
45.5% |
小売業 |
40.8% |
飲食サービス業 |
40.6% |
卸売業 |
34.7% |
生活関連サービス業、娯楽業 |
34% |
個人教授所 |
30.9% |
電気・ガス業 |
18.1% |
物品賃貸業 |
14.2% |
クレジットカード業、割賦金融業 |
11.6% |
この表からわかるように、最も高いのは、鉱業、採石業、砂利採取業の64.2%。
最も低いのはクレジットカード業、割賦金融業の11.6%でした。
割賦金融業とは、分割して代金を受け取る形で販売を行う店に資金を供給する企業の業態を指します。
自己資本比率のメリットとデメリット
自己資本比率が高いことには、メリットとデメリットがあります。
メリットとしては、以下のような点が挙げられます。
メリット
- 返済の負担が少なく、利息の支払いが少ない
- 経営の自由度が高く、自分たちの意思で事業展開ができる
- 信用力が高く、資金調達が容易になる
- 株主からの評価が高く、株価が上昇する可能性がある
一方、デメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
デメリット
- 資金の効率的な活用ができない
- 他人資本の活用が少なく、レバレッジ効果が低い
- 株主からの配当要求が高まる
- 自己資本比率が高すぎると、信用が薄く資金調達が困難になる場合がある
自己資本比率は、高ければ高いほど良いというものではありません。
企業の業種や規模、成長段階などに応じて、適切な自己資本比率を維持することが重要です。
まとめ
自己資本比率とは、企業の総資本に占める自己資本の割合を示した財務指標です。
自己資本比率が高いほど、企業の安定性や成長性が高いといわれますが、産業によって平均が異なります。
自己資本比率は、企業の財務状況を評価するための一つの指標であり、メリットとデメリットがあります。
企業の業種や規模、成長段階などに応じて、適切な自己資本比率を維持することが重要です。